2024年度大学入学共通テストの英語のリスニング問題は,特段難易度に大きな変化があったわけではなく,例年通りの難しさ,あるいはやや易化したと思います。ごく少数の例外を除いては,どれも根拠がはっきりとしていて,正解が選びやすい問題ばかりだったと思います。
ただし,例外はありました。それが第5問の問28~31です。これは,ガラスに関する講義を聴いて,ワークシート内の空所に当てはある語句を選択肢から選ぶ問題でしたが,その設問の作りがかなり「粗い」ように感じられました。たとえば,選択肢①~⑥を見ると,動詞が現在普通形になっている選択肢と,受動分詞形(過去分詞形)になっている選択肢がそれぞれ3つずつあります。これは,ワークシート内の Production と Uses of Current Technology の項目の穴埋めを,無理矢理同じ一つの問題にまとめてしまったためと思われます。勘の良い生徒であれば,この選択肢の内訳を見て,「あ,動詞が同じ形になっている3つの選択肢の中から,それぞれの項目を埋めればよいのだな」と気が付いてしまいます。これは英語力とは関係ありません。大学入試センターが,これまで続いてきた「設問の形式」にこだわりすぎてしまった結果,本来の試験の意図とはそぐわないような出題になってしまったものと思います。なぜ項目別に設問を設定しなかったのか,そもそもワークシートの穴埋めという問題設定自体が本当に有効なのか,大人たちは改めて考え直すべきでしょう。いかにも頭の固い官僚型試験という印象がします。また,Production という項目名も不自然です。受動分詞形で答えさせるならば,Production Process「生産過程」とするべきでしょう。さらには,選択肢⑤Reflects views of も極めておかしい。reflect views of は「~に対する考えを反映する」という意味で,明らかにこの講義とは関係のない表現です。これはただ単に,音声の中に出てくる reflect light 「光を反射する」という表現と,「view = 視界」という連想から,受験生をひっかけようとするダミー選択肢であることは一目瞭然です。このような「意味のない難しさ」に泣かされた受験生も多かったのではないでしょうか。大学入試センターは「受験生をひっかけるような意地悪な問題は出さない」ことを謳っていますが,明らかにこれは悪質な二枚舌です。大人社会に対する受験生の信頼をこれ以上損なうような問題作りは即刻止めるべきです。
ちなみに,問題の粗さでいえば,同じ第5問の問33も同じことが言えます。なぜならば,この問題は講義の内容を一切聞かなくても正解が選べてしまう問題だったからです。実際に,私は放送が始まる前に正解の選択肢を選びましたし,私の教え子も同様に放送前に選択肢を選んで正解したと言っていました。毎年,このような「問題を読まなくても(聴かなくても)解けてしまう問題」が出題されていますが,おそらく大学入試センター側も対策を練り始めるだろうと思われますので,こうした問題は徐々に減ってくるのではないかと思います。
以上が,2024年度大学入学共通テスト英語リスニング問題を解いてみての感想でした。
青藍塾では,リスニングだけでなく音読も重視した授業を行っております。早め早めに大学入試の対策を立てたい方,この記事を読んで少しでも興味を持っていただけた方は,ぜひお気軽にお問い合わせください。皆様との御縁を心よりお待ちしております。
0コメント