皆さん、こんにちは。
青藍塾代表の澁谷です。
突然ですが,次の英文の ( ) 内に入る一語を答えられますか?
We tend to see oceans as unfathomable, the closest thing we have on this planet ( ) outer space: dark, forbidding, and, especially in the depths, quite weird and mysterious.
一見すると,「こんな難しい問題わかるわけないじゃないか」っと思ってしまうかもしれませんが,実はこの問題,中学英語がきちんと身に付いてさえいれば,誰でも解けるはずの問題なのです。
こんな事を言うと,「そんなこと言ったって,中学生が unfathomable なんて単語を知っているわけないだろう」という反応が返ってきそうですが,それは確かにおっしゃる通りです。
しかし,この問題,unfathomable という単語の意味を知らなくても解くことができるのです。
というかそもそも,この英文の筆者は,読者が unfathomable の意味を知らないことを初めから想定してこの英文を書いています。
(ちなみに,この英文は,アメリカ人ジャーナリストの David Wallace-Wells が書いた The Uninhabitable Earth という本の中の一節です)
なぜなら,unfathomable の後ろに「同格のカンマ」が打たれ,言葉を変えて説明が加えられているからです。
「私たちは海を unfathomable ,すなわち the closest thing ...としてみなす傾向がある」というように,unfathomable が the closest thing ... に言い換えられているのです。
ですから,たとえ unfathomable の意味を知らなくても,この英文の解釈に問題はないのです。(ちなみに unfathomable は「計り知れない・底知れない」という意味です)
念のために付け加えておくと,同じように weird の意味を知らなくても,正しく英文を解釈するのに影響はありません。
というのも,この英文において,weird は and を使って mysterious と並列されているので,この二つの単語はだいたい同じ意味を持っていると容易に推測できてしまうからです。
では改めて,( ) 内に入る一語が何なのかを考えてみてください。
答えは出ましたか?
それではこのまま正解の解説に移ります。
まず,( ) 内に入る一語を特定するにあたって,注目すべき箇所は,
the closest thing we have on this planet ( ) outer space
です。
the closest thing の直後に目的格の関係代名詞( which もしくは that )が省略されていることは,have の後ろで目的語に当たる名詞が欠けているのを見れば明らかです。
つまり,the closest thing という先行詞が,その後ろの (that) we have on this planet
という関係節に修飾されているということです。
関係節というのは,文型上はオマケに過ぎない部分(つまり,主語にも目的語にも補語にもならない)なので,いったん取り除いてしまいましょう。
すると,
the closest thing ( ) outer space
というシンプルな形になります。
もうお気づきですよね?
そう,この問題の正解は 『 to 』 です。
なぜかって?
中学校で英語を習ったことがある人は誰でも知っているように,形容詞 close は前置詞 to を伴って,close to ~「~に近い」という意味になるからです。
( My house is close to the station. 「私の家は駅の近くにある」なんていう英文は,中学1年生で目にしますよね)
結局,この問題を解くのに必要な「同格のカンマ」も,関係代名詞の省略も,いずれも中学3年生までに習う文法知識です。
だからこの問題は,冒頭でも言った通り,中学英語をきちんと身に付けた人なら誰でも解くことができるものだったのです。
とはいえ,実際の私の経験上,難関大学を志望する高校生にこの問題を見せても,正しい答えを出せる生徒は意外に少ないのです。
問題の答えが to であることを伝えた後で,正解を出すことができなかった生徒に詳しく話を聞いてみると,彼らは一様に,「unfathomable の意味を知らなかったから,正解がわからなかった」と言い張ります。
しかし,先ほど解説したように,直後に「同格のカンマ」があるため,正解を導き出すにあたって,unfathomable の意味を知っている必要はありません。
また,彼らは,以前の授業で「同格のカンマ」や関係代名詞の省略を習ったことはきちんと覚えているのです。
つまり,彼らに足りなかったのは単語力ではなく,また文法知識でもなく,『観察力』だったのです。
もしこの問題が,
My house is close ( ) the station.
だったら,100%に近い生徒が正解を答えられたでしょう。
しかし,実際の入試問題はこのような出題の仕方をしません。
close と to の間に修飾語句を挟んだり,いかにも受験生が知らなそうな unfathomable という単語を置いたりして,正解をカモフラージュするのです。
そして,『観察力』に欠けた受験生はまんまとその罠に引っかかり,「unfathomable の意味が分からないから,この問題は解けない…」と諦めてしまったり,close と to が離れているために,そのつながりに気づけなかったりするのです。
残念ながら,そんな受験生は大学側が欲しがらないというわけです。
表面的な難しさに惑わされず,きちんと論理的に本質を見極める力,その力こそが「観察力」であり,大学入試レベルの英文読解には必要不可欠な能力です。
こんな事を言うと大げさに聞こえるかもしれませんが,この「観察力」は大学に入る前だけでなく,大学を出た後の一般の社会生活でも大いに役立つものだと思います。
人生を通して役に立つ能力を,高校生の段階で学ぶことができるのが,大学受験の良いところかもしれません。
最後に,問題の英文を和訳すると次のようになります。
「我々は,海を底知れないもの,すなわちこの地球上でもっとも宇宙に近い存在だとみなす傾向がある。つまり,暗くて近寄りがたく,その深淵さにおいてはとても奇妙で神秘的な存在である」
今後の英語の勉強に役立てて頂ければ幸いです。
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