それでは早速、次の英文を和訳してみてください。
What Newton had done for our understanding of gravity, Einstein had done for our view of time and space, managing in the process to overthrow the Newtonian conception of time.
この英文は、言わずと知れた車椅子の天才 Stephen Hawking が編集&解説を執筆した On the Shoulders of Giants という本の中の一節です。
ここでの Newton はもちろん、万有引力の法則を発見した Isaac Newton (1642 - 1727)のことです。
もう一人、Einstein も言うまでもなく、一般相対性理論を提唱した Albert Einstein (1879 - 1955)です。
その他の単語の意味は、英検2級を目指している人であれば必ず知っておかなければならないレベルですね。
ちなみに、動詞が過去完了形になっているのは、ここでは割愛した前後の文との関係のためなので、あまり意識しなくて構いません。
さあ、それではしばらく時間を取って、自分で和訳を作ってみましょう。
さて、和訳は作れましたでしょうか?
正解は、
「我々が重力のことを理解するためにニュートンが果たしたことを、アインシュタインは我々が時間と空間のことを考えるために果たしたのであり、その過程において時間に対するニュートン的な考え方を覆したのだ」
です。
以下、解説です。
文頭の What は後ろに続く語順から、疑問詞ではなく関係代名詞であると判断できます。
関係代名詞 what の後ろには必ず不完全文が続きますが、今回は had done の目的語が欠けていますね。
関係代名詞 what 自体には「もの・こと」という意味を持たせるのが基本ですから、とりあえず文頭からカンマまでを直訳してみると、「ニュートンが我々の重力の理解のためにしたこと」となります。
関係代名詞 what は後ろに続く不完全文とセットになって必ず名詞節を作りますが、今回は文頭に来ているので、主語として働いているのかと思いきや、後ろには動詞が続いているわけではなく、カンマで区切られてしまっています。
しかも、カンマの後ろには Einstein had done ... と、別の SV が続いています。
つまり、主節の SV の前に名詞(what 節)が孤立してしまっているということです。
英文法上、これはかなり異常な状況です。
たとえネイティブが読んだとしても、ここまで見ただけでは「???」となるはずです。
この部分を見るだけでは説明がつかないので、とりあえず先を読み進めます。
Einstein had done for our view of time and space には頭に関係詞も接続詞もついていないので、この SV が主節であると判断できます。
ただし、よく見てみると、他動詞 had done の後ろに本来あるべきはずの目的語(つまり名詞)が欠けていることがわかります。
どう考えればよいのかはもうお分かりですよね?
【構文把握練習】中級編①で解説した通り、
「名詞が余っている所から、足りないところに移動させてあげればよい」
でしたね。
したがって、文頭で孤立していた What Newton had done for our understanding of gravity は、Einstein had done の目的語だったということです。
言い換えれば、SVO が変形して、OSV という語順になっていたということです。
これをもとに戻して、二つ目のカンマまでを直訳すると、
「ニュートンが我々の重力の理解のためにしたことを、アインシュタインは我々の時間と空間の考え方のためにした」となります。
次に、文末の managing in the process to overthrow the Newtonian conception of time の解釈に移ります。
managing は動詞 manage の -ing形ですが、動詞の-ing形は、動名詞(名詞の働きをするもの)、現在分詞(形容詞の働きをするもの)、分詞構文(副詞の働きをするもの)の3つの可能性があります。
この英文の場合、主節の後ろにカンマが打たれ、それに-ing形が続いているため、まずは分詞構文ではないかと疑ってみましょう。
分詞構文自体には決まった訳は存在しないので、前後の意味を確認した上で、論理が自然につながるようにあとから訳し方を考えればよいです。
さて、動詞 manage は、第3文型SVO で「~を管理する」などの意味を持ちますが、目的語が to V の場合、「(苦労の末に)どうにか~する」という意味になります。
今回、manage の目的語は to overthrow ... です。
(the process には前置詞 in が付いているので、目的語になることはできません)
したがって、in the process は副詞句としていったん飛ばして考え、managing to overthrow ... をつなげて考えます。
overthrow は「~を覆す」という意味で、その目的語は the Newtonian conception of time 「ニュートン的な時間の考え方」です。
よって、managing 以下をまとめて訳すと、「その過程において、どうにかニュートン的な時間の考え方を覆した」となります。
あとは、分詞構文の部分をどう訳してつなげるかを考えましょう。
分詞構文の訳を考える際、置かれている位置が手掛かりになります。
分詞構文が主節よりも後ろに置かれている場合、基本的に「付帯状況」の意味になるといわれています。
「付帯状況」と聞くと、何やら難しそうな感じがしますが、簡単に言えば、「~して」や「~て」と訳しておけばOKということです。
実際に訳してみます。
「ニュートンが我々の重力の理解のためにしたことを、アインシュタインは我々の時間と空間の考え方のためにして、その過程において、どうにかニュートン的な時間の考え方を覆した」
となり、managing を分詞構文と考えて問題なさそうです。
最後に、このままでは日本語がぎこちないので、訳語を調整しましょう。
例えば、understanding of gravity や view of time and space の of は「目的格の of」と呼ばれ、「の」ではなく「を」と訳します。
それに伴い、understanding は「理解」ではなく「理解すること」と訳し、view も「考え方」ではなく「考えること」と訳します。
これは「名詞の動詞化」と呼ばれる和訳テクニックで、日本語ではふつう名詞にはしない言葉も英語では名詞で言う特徴があるために、重用されるテクニックです。
以上、解説でした。
ちなみに、the Newtonian conception of time というのは、ニュートンは時間を「万人に共通する絶対的なもの」とみなしていたことを指しており、それに対して、アインシュタインは時間を「個人によって異なる相対的なもの」と捉えていました。
ぜひ、これからの英語の勉強にお役立て下さい。
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